Vコンサルタントブログ

不正経理の実態を見抜く!

   経営者は、できれば社員の『性善説』を信じて「ウチの社員は信頼できる。そして信用している。」と言いたいものです。しかし、書類を改ざんする、支払い先の業者と結託するなどの方法をとれば、経営者の目に触れないところでこれらの不正は起こり得ます。これまで、多くの会社を見てきて、例えば、出先の事業所や子会社・関連会社で経営者が月1回とかたまにしか訪問しないケースや、建設現場のように業者への支払査定や決済が、現場責任者の判断に任されている場合などは、不正経理は、十分に起こりうると言えまず。最近は、法令遵守(コンプライアンス)が重視され、またセキュリティが厳重になってきましたが、例えば処理はシステム上適正に行われていても、システムに入力する前段階で数字を操作して入力すれば、不正は隠ぺいされることになります。今回は、ある専門工事業者の実例から、不正経理の見抜き方の事例を紹介したいと思います。
1.【通常比率の異常を見抜く】
A社の場合、年間25億の売上がある専門工事業者です。この会社の場合は、職人さんである技能工を抱える班(親方や工務店)に労務を外注しており、過去3年間の売上に対する労務費率は70%でした。現場は、本社の所在する県の現場がいくつかあるものの、県内の遠隔地や他県、他地方の現場も相当数(売上にして全体の50%以上)あります。ですから、本社では現場の工事実態は日々わかりませんし、それこそちゃんとやっているかも日報の報告だけで実際はどうか確認する術がありません。前年度に決算を締めてみると、原価が大きく膨らみ、会社全体として億単位の赤字決算になっていました。それから原因追求をしたものの、書類や処理は整っており、処理上の異状は発見できませんでした。決算後、不審に思った経営者から相談があり、原因を調べてほしいとのことでした。建設業は有期事業といって、工事期間中の工事毎の工事売上と工事原価を計上して工事毎に決算を行い、会社としては、それを年度ごとに集計していきます。そこで、会社決算の数字を分解して、現場別に整理し直しました。すると、先ほどの売上に対する労務比率が通常70%であるのに対して、80%を超す現場が続出し、ひどい現場では110%を超す現場まで存在しました。つまり、通常比率を当年度だけ大きく上回っているとすれば、何か恣意的な『水増し請求』や『架空請求』が行わわれている可能性が大きいと判断できます。
2.【人別・要素別のセグメント分析】
1.の異常値が発生した現場別の表を眺めていると気づいたことがありました。
①労務費の異常比率が発生している現場は、ある特定の担当者数名に限定されていること。
②通常年の労務比率は70%である一方、労務外(材料・外注・経費)の売上比率は通常15%という結果がでています。「あれ、労務費だけじゃないな・・と感じ、労務外原価も異常値もないか分析してチェックしてみました。すると、材料費等の労務外原価が倍かかっている現場がいくつも発見されました。
そこで、担当者毎に現場を名寄せして小計をとってみると、労務費比率が70%を大きく上回る現場の通常比率の場合の原価に対し、一人で1億を超える原価超過額といったケースも見受けられました。この場合は、業者からの「水増し請求」やそれによるキックバックなどが疑われます。また、労務費比率は適正ですが、労務外原価が通常の対売上比率15%を大きく越している現場が多数見受けられました。これも先ほど担当者別に集計してみると、複数名が数千万円単位で通常額を超過していました。これは、材料業者を介して「架空請求」が行われていた可能性があります。
3.【支払集計表と実際支払処理額のズレ】
もう一点気になったのが、現場毎の支払集計表の年度累計額と実際支払額である決算支払原価に1億の差額が発生してことです、これは単なる集計ミスか、もしくは支払集計表作成後に、個別業者の支払票に転記する時に支払額が上乗せされた可能性があります。もっとも、25億売上げている会社で、1億も超過して支払うということは考えにくいと思われます。つまり、書類上・システム上の処理を記載した支払集計表と実際支払額がズレていることで、不正が疑われます。
この会社さんについては、この疑わしい担当者たちはみな既にこの短い間に退社しています。そこで、刑事訴訟を行うことを視野に入れ、現在鋭意、訴追のためのエビデンスを揃え中です。世の中が進化して、厳格さが増している中で、「今時、ないでしょう?」と考えがちですが、現実の話としてこれらは起こっています。社員を信じ、信頼したいのは経営者として当然です。しかし、「ひょっとして・・」と思った時は、上記のような切り口で、不正経理の実態を見抜く必要は避けられません。今時であれば、クラウドツールで現場の実態の出来高と日々管理の実態を写真を含め、送付させるなど、不正を絶対発生させない事前チェックのしくみを作っていきたいものです。

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