経営者の危機管理 過去事例1
業務改善
組織強化
経営者・経営の有事対応
経営計画
1
私たちがまだ茨城県つくば市に本社を置いていた頃のこと、初めて作ったHPに隣県から相談依頼がありました。車を走らすこと3時間。会社に伺ってみると、事務員さんらしき女性がでてきました。「こちらへどうぞ」と招かれ、どうもその事務員さんが専務とのこと。
また、まだ30代前半とおぼしき、役員の貫禄は感じない青年が同席していました。この方が社長らしい。「大丈夫かな?」と感じずにはいれられませんでした。
「東京にもコンサル会社が沢山あるのに、わざわざつくばの当社にお声がけいただいたのですか?」と依頼の理由を尋ねると、「東京のコンサルは敷居が高いし、地元だと噂が流れるので、同じ関東圏の東京以外ということで選びました」とのこと、何かほめられた気はせず複雑な思いがしました。
ともあれ話を伺うと、前社長は長くワンマンで経営をしてきましたが、近年体調が悪化し、経営を続けられず、社長を退任せざるを得なくなったとのこと。更に専務は、社長退任で金融機関から「経営は大丈夫か?」と邪推され、信用力が落ちたためかニューマネーの融資が受けられず困っているとのこと。父が外れた今、今後の新組織や経営体制を案じているとのことでした。
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専務は、「ニューマネーの融資が受けられません。金融機関にはこれまで社長であった父が一人で対応してきたので私たちは交渉未経験です」と言って不安そうな顔を見せました。私たちは「各金融機関に挨拶回りをしましょう」と提案しました。顔も見せない、人となりもわからないとなれば、融資などできるはずもありません。
「まず、スーツを用意し、パンプスにはき替え、お化粧も整えて下さい」「社長もスーツに磨いた靴でご準備下さい。お二人でまずは銀行回りの挨拶、そして担当者と世間話です」ロールプレイング(挨拶時を想定して、同じことを試しでやってみる)を行い、経営者として融資を受けるにふさわしい対応を教えたのです。
「次は組織か…」と考えた時、リタイアした前社長が経営・営業・事業とオールラウンドであったため、それに見合う経営管理は望むべくもありません。そこで考えました。「チーム経営だ!」と。事務上がりの女性専務は以前、東京の旅行会社で営業をやっていたと聞いていました。
お客様である小売店の旦那衆は、女性の営業を嫌とは思わないに違いないと考え、女性の柔らかさを生かした営業担当への抜擢を提案しました。
晴天の霹へきれき靂であったようですが、「やってみます!」とのこと。新社長は、人はよさそうなので、会社の顔(社長)として前面に出てもらう。そして仕入商品の管理やルート営業の同伴フォローはやってもらう。そんな風にそれぞれのキャラとスキルを生かした布陣で、新体制がスタートしました。
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これまで前社長が一人で事業全般を抱えて今日まで成長させてきた会社です。経営上の大きな事業システムとしての分業やオペレーションはできていたものの、荒削りな事業体制である印象はぬぐえませんでした。
バイヤーとして地元のお土産品を購入して在庫し、それを各小売店にデリバリーして卸売りをしていましたが利益率が悪いとのこと。「なんでそうなっちゃうのかな?」と案じてその流れを追跡(トレース)してみました。
倉庫がまず雑然としている。配達の営業社員の方に「棚札(入出庫記録用紙)は使っていないんですか?」「商品を地番管理(置き場所に番地をつけて管理)はしていないのですか?」と尋ねたところ、「棚札使っていません」「大体場所はわかるし、減ってきたらすぐ手配するから困っていないから棚札もないし、地番管理もしていません」とのこと。
要は、日常の商品の入出庫管理はしておらず、月末在庫数を数えて前月末との増減を知るだけとのことでした。要は毎日の在庫数が正しいかどうかは把握しておらず、日常の実際在庫数の管理はしていないとのことでした。
それにしても伝票で入出数はわかるわけで、月末棚卸で、伝票上の在庫と実際の在庫のズレがなぜ出るのか疑問でした。しかし配達の営業社員さんに聞くとすぐその謎が解けました。社員曰く「そりゃ数は合わないよ」。
私たちが「何故ですか?」と聞くと、「お客さんに見本として開けて食べてもらうこともあるし、余ったらもったないから捨てずにみんなでお茶菓子に食べることもある。」「箱を車から落として、途中で箱がキズつくと商品にならないんで、その時はもらって帰ったりしてます」。
愕然としました。1,000 円の商品の原価を600 円としても5つつぶせば3,000 円の損失になり、積み重なると仕入商品の廃棄や自家消費(自分たちで食べる・持ち帰る)での多大な損失が発生しているこ
とがわかりました。要は大雑把な商品管理をしているということでした。
それがわかっても、急に難しいオペレーションをお願いしてもできそうもないし、ましてや今のシステム化には急にはついていけそうにありません。そこで、急いで、きちんと数をチェックして記録するしくみづくりをして、日々の商品数量を把握し、廃棄や自家消費の数を見える化することから始めてもらいました。
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資金調達・営業・事業オペレーション管理スキル、これらそれぞれが単一のスキルですから、外部目線で経営コンサルが現状をチェックし、力量が不足ならただ習うのみです。
一方「経営スキル」はそう簡単ではなく、経営資源の管理を始め、営業・事業・管理さらには法令遵守や環境保護、そして情報セキュリティ等々まで数々のスキルを獲得し、かつそれらをバランス化させる総合スキルを身につける必要があります。
前社長の時代では、前時代的ながらかろうじて全体をバランス化させていました。しかし、前社長のリタイア後には、全体を見られる人はすぐには育ちえません。
そこで、だれかの強みを生かす(たとえば専務の営業キャリアとセンス)を切り口に、経営経験のない人たちの「チーム経営」としてスキルを寄せ合って戦うことは可能です。中小企業では、かつての時代のようなカリスマ的経営者は希少価値になりつつあります。そんな時、スキルを寄せ合う経営チームがあってもいいはずです。
弊社代表著書「中小企業を強くする10のキーワード しくみづくりのフレームワーク」4章 10のキーワード活用事例(P.97-102)より




