Vコンサルタントブログ

『体験』は力なり

 「今だって大変なのに、原価だ、ITだ、と我々に何をやらそうとしているんですか・・」

全国の現場から集まった月一回の集合研修で、地区のリーダークラスである彼は皆の思いを代表して、大声を上げたのでした。全国各地の山あいや海辺、そして街中と・・建設プロジェクトがあればどこにでも飛んでいって現場を張って橋を架けるこの会社の仕事は、まさに「男のロマン」。家族と離れ、単身多くの技能者を使って、何ヶ月も泊まり込んで街と街をつなぐ橋をかけています。

 社長は、そんな自社の事業を誇りに思い、そして全国各地で日々汗を流す社員達を大切に考えています。しかし、そんな事業でも安定的な受注と継続企業として運営していくには、技術的にも管理的にも競合他社に差別化を図っていく必要があります。そこで社長が克服すべき課題として考えたことは次の通りでした。

 ① 全国数十ヶ所の現場からFAXやメールで毎日送られてくる労務人員日報の手集計と確認に相当な時間と労力を要していること。(労務費が工事費用の7割近くを占める)

 ② 高い技術は持っているものの下請工事のため、かかった人員分の請求をすることを基本としてきたおり、現場予算である実行予算管理が行われておらず、コスト管理が感覚的になっていること。

 そこで、コンサルタントとして、社長に

①の解決策として、作業日報(作業実績)の集計をクラウド型のシステム(データセンターにサーバーを設置してデータ収集)を構築して、そこに全国の現場のパソコンから直接入力された労務人員をリアルタイムで集計して、大幅な省力化を図る。

②の解決策として、実行予算制度のしくみを構築すると同時に工事施工出来高や①の労務実績データ他工事の稼働実績をインポートできる同じくクラウド型の原価管理システムを採用する。

以上の二つのITシステムを導入することによって工事実績集計の省力化と原価管理を同時に実現できる構想を提案しました。つまり、今まで、作業員と一緒になって寝泊りし、現場で共に汗を流してきた現場の社員達にITシステムを本格導入するという考えです。

今までパソコンこそある程度エクセルが打てるものがいる位で、ITシステムとは無縁であった彼らの現場に如何にITシステムを取り込むか・・これは大きな変革であり、カルチャーを一変させる進化プロジェクトです。我々は、月1回の土曜日に現場を全休してもらい、集合研修を行って新しい試みを理解してもらうことにしたのです。しかし、現場の作業員の送り迎えや弁当の手配などを中心に行ってきた彼らには、前述のように「何をやらかすんだ・・」という根強い抵抗感を持たれる結果となりました。私たちはまず、次の行動をとりました。

①とにかく「負担が増えるのはいやだ」などと徹底したガス抜きをしてもらう。

②イメージは「大変だ。」と思われるが、実は皆さんが楽になるとよく説明。

③現場にとってのメリットを強調するプレゼ資料を作成して質問に十分答えた。

 ここまで来ると、「話は理解できるけど・・」と不安はあっても、理性的には受け入れようという気持ちになってくれたのです。そこですかさず、操作スキルを研修して現場を巡回する教育チームとして『現場キャラバン隊』を組織し、新システムが簡単に操作でき、今までより大分楽であることにつき、パソコンを実際に触って体験してもらうことで、自ら確認してもらいました。・・大成功です。自分で「使う体験」をしたことでメリットを体感できたのです。次月のセミナーでは、「これからは必要だと思う。」と口々に建設的な意見が出るまでになったのです。

ITシステムの全面導入構想から一年。全現場が新システムに移行しました。まだミスはあるし、たどたどしいですが、とにかく全社のシステム移行にこぎつけたのです。これで大きく省力化と原価管理に踏み出すこととなります。なぜ成功できたか・・答えは簡単です。自らそのシステムが役立つことを「体験」により実感できたからです。

まさに『体験』は力なのです。

 

以 上

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